「今を生きること」と無意識さん・その1
このところ、君は、それこそ、今までに何度も何度も、味わったことのある苦痛を、ああ、またなのか、と、まだこんなことが続くのかと、そんなふうに、うんざりした気持ちで味わいながら、すごしていたわけなんだけどね
そんな苦しみの最中だからこそ、君は、いつもにも増して、いや、これまでに、本当のことを言って、そんな頻度では唱えたことがないくらい、自分に必要と思われる、言葉や、遺伝子コードを唱え続けたわけなんだね
もう、それ以外になす術がないと
これまでだって、君はこんな苦しみを嫌というほど経験してきてね、だけど、君がありとあらゆる手を尽くして探した救いの道は、思ったほどに君を助けてはくれなかったわけなんだね
だからね、今はこうして、唱えるしかないんだと
そんな風に思いながら、君は、ずっと、ずっと辛抱強く、唱え続けていたわけなんだね
そしてね、苦しいけれど、つらいけれど、いや、こんな窮地に立たされたからこそ、君は、それだけ長い間、そしてそんなにもたくさん唱えることができた
そんな風にも思ったわけなんだね
まあ、そういう状況に陥るということについて、君は、もちろん、うれしいなんて思ってもいないわけなんだけどね
ただ、結果として、言葉も遺伝子コードも、ものすごい量が君の中に降って、君を満たしたということになるわけなんだね
そしてね、君は、ようやく、その苦しみから、少しだけ解放されつつある今、何だか、何かが変わったんだなということを感じているわけなんだね
あれ?と
これまで、そのものが素敵だ、と思って反応していたものが、なんだかしっくりこないんだと
そしてね、それはどうしてだろうと、君は思案したんだね
そしてね、君は、ああ、と思い至ったんだね
ああ、どれも、これも、今の自分にぴったりのものではないからなんだと
そんな風に思ったんだね
ほんの少し前まで、いや、もしかしたら、君の奥底では、とうの昔に気づいていたことなのかもしれないけれどね、それが、今、やっと、君の意識に届いた、ということなのかもしれないね
そしてね、君は、それを、少しばかり寂しく思ってはみるものの、今の自分にそぐわないそれを、無理に自分が好むとういことは、やっぱり、もう、ないんだろうな
そんな風に思うんだね
そしてね、その感じは、仕方がないというか、受け入れるしかない、そんな風に思うんだね
そしてね、そうやっていくと、何だか、色々なものに対して、興味がなくなってしまったのかと、そんな風にも思ってしまったわけだけどね、それもなにか違うなと、そんな風に思うんだね
それはね、たとえ、世間で絶賛されているすばらしいものがあると知ったとしても、たとえば、君が、今、この瞬間、興味を持っている、些細なこと
たとえば、今、目の前にある川の水は、どうして上流から下流にちゃんと流れていくのだろう、とかいう、本当につまらないと思えるようなことの方が、君にとっては大切に思えてしまうんだね
いや、思えてしまうというか、そのことに夢中になって、巷で騒がれていることは、頭の中から排除されてしまうという、そんな感じが続いているんだね
つづく