「名前を無くすこと」と無意識さん
それはね、このところ僕が君にささやいている、名前についてのお話なんだね
人は生まれてすぐに名前をつけられる
そうだね、人以外のありとあらゆる生き物や可愛がっているもの、それこそ目に入るものには何でも名前をつけてしまうんだね
ところでね、もしもね、人に名前をつけなかったらどうなるだろうと、僕は君に言ってみたんだね
君はしばらく考え込んで、それは今となっては想像することがひどく難しいことだと思ったんだね
だけどね、もしそうだとしたら、何だかとても自由になる気がしたんだよね
名前というものがないと、他人と自分の違いがなくなるように感じたんだね
つまり、逆に言えば、名前というものは、ものすごい力を持っていると言えるんだ
たしかにね、名前をなくす、なんてことは、今から実際にどうにかできるものじゃないかもしれない
でもね、そのことを想像すると、さっき君が感じたような、なぜだか分からない自由な気持ちになれるというわけなんだね
そしてね、君が誰かと話すときにね、もし、この人に名前がないとしたら、なんて思いながらその人に接したらね、とても不思議なことが起きるような気がするんだよ
こうして僕が君に話している間も、君はそのことを想像しようとしてみているわけだけどね
そうすると、それを止めようとする力のようなもの感じてしまうんだね
まあ、それがまさに意識の力といえるかもしれないね
君が意識が作り出した世界から抜け出そうとすれば、意識は即座に反応して、君を意識の檻の中に閉じ込めておこうとするからね
だけどね、君はもう僕の話を聞いてしまった
だからね、それだけで大丈夫と僕は言いたいんだよ
名前がないと見えてくるのは、まさに無意識の世界なんだ