「呼び名を無くすこと」と無意識さん
この間ね、君にお話しした「名前を無くす」ということなんだけどね、その話にはまだ続きがあるんだよ
そんなことを、また君にしつこくささやいていた僕に、君は根負けして、こうして僕につきあってくれることを、僕はとても嬉しく思うんだよ
そしてね、その続きというのはね、「呼び名を無くす」ということなんだよ
名前でなく、呼び名ということはね、つまりね、あだ名というものも含めたものなんだけどね
分かりやすく言うとね、役割の名前と言い換えることができるものかもしれないね
会社であれば、社長とか部長、学校だったら、先生とか教授とか、家庭だと、お父さんとかお母さん、といった具合に、名前とは別に呼び名があるわけだよね
そんな呼び名というものはね、名前とはまた違った感覚で人の自由を奪っているんじゃないかと思うんだよ
そんな話なら、何だか聞いたことがあると、君は思っているわけだけど、もう少しだけ、僕のお話に付き合って欲しいんだよ
名前というものは自分と他人を区別するもの、そして自分というもの、そして他人というものがあるんだ、なんて君たちに信じ込ませるためのものだと思うんだよ
そしてね、呼び名というものはね、役割というもの、使命みたいなものがあるんだと、そんな風に思い込ませることにとても役立つものじゃないかと思うんだよ
だからね、そんな呼び名というものを無くしてしまえばね、人はまた、役割というものから解放されて、さらなる自由を手に入れることができるんじゃないかと思うんだよ
そんなことを僕が話すとね、君は必死になって、その場面を想像しようとするわけなんだね
するとね、とても不思議な光景が君の中に浮かんできたんだね
名前を無くし、そして呼び名を無くしたその相手は、なぜだか分からないけれど、その人はいつの間にか砂で出来た人形のようになって、そして 急に強い風が吹いてきて、その人を形作っていた砂は、はらはらと吹き飛ばされて、そしてその人は影も形もなくなってしまったんだね
そしてね、その人がいた場所に残ったのは、暗闇の中の光だったんだね
名前も、呼び名もなくなったとき、人はなぜか光そのものになって、ただ、その人のいた場所で、それぞれが光を放っていたんだね
そして、光でもって、そのほかの光と会話をしているような、そんな夢のような、不思議な光景が君の中に浮かんだんだね
君はわけがわからなくて、だけど、そんな光景を目にした君は、なぜかホッとして
そして、これでいいんだと
ただ、そんな風に思ったんだね