水面下にあるものと無意識さん
みじめな下僕であると、そんなことを思ったんだね
君のうまれたあの家で、君は母の下僕にされたんだね
そして、そこで築かれた関係性を、君はどこへ行っても繰り返して、そして、どうしてこんなに苦しいのか
そして、どうしてこんなに惨めなのかと
そんなふうに自分の不遇さを嘆きながら生きてきたというわけなんだね
性と支配のお話が始まってもう一ヶ月にもなると
それなのに、自分は自分にかけられている支配の、その性的な快感というものについて、よく分からないと
そんな風に思っていたんだね
どうにかして支配から解かれたいと願う君は、自分の中のそういった感覚を躍起になって探していたわけなんだけど、どうにもそれが見つからないと
そんな風にして日々を送っていたんだね
大嶋先生のお話では、水面下にあるそういった感覚に気づくだけでいいんだと
気づくだけで解かれていくんだと
そういうお話だったんだね
それならば、苦痛を伴わないならば、ぜひとも早くそういった感覚を見つけて、少しでも楽になりたいんだと
そんな風に思い続けて
だけど、あせってもそういうものが見つけられるわけじゃないというのも、もう散々味わってきたものであるわけで
君はその時が来るのをただ待っていたというわけなんだね
そして、今日、ようやくそれらしいもの
どんな時でもたいていそうなのだけれど、なんとなく湧いてきて、そこにある感覚
そういう感じでもって、下僕という言葉が浮かんできたんだね
そしてその言葉をもとに、君は母親とのやり取りをそこに当てはめてみたんだね
すると、どうやらその言葉は君と母親との関係性を如実に表しているものだったと
どうしてその言葉に気がつかなかったのかなと
今なら不思議に思ってしまうくらい
君は母親の下僕で、いつも汚い仕事を任されていたんだと
いつもいつも母親のご機嫌を伺い、母のためにだけ生きるのだと
母にとっての、母親としての体裁を保つための娘として、最低限見苦しくないように振舞うことを保ちつつ、かと言って女として母を超えることなど許されない
人生において母より幸せになることなどありえない
母のいない場所であっても、常に母の娘ということを何よりも尊重して生きることを課せられていたんだと
さらには、下僕であるその証拠としてなのか、君が女であるということについては余計なもの、そして母自身が女性であるにもかかわらず、汚いものとして扱われたんだね
それは時には彼女の視線で、そして時には男たちを使って君が女であるということが嫌になる様なことを、これでもかと植え付けたんだね
そして、家の中では母と家族の間の調整役として、母を決して悲しませたり、苦しめたりしないようにヒリヒリとした空気感の中を切り盛りしていたんだと
そして母が背負っている抱えきれないくらいの愚痴や不満のはけ口として、君はその汚物を口を開けて飲み込んでいたんだね
それはもう当たり前のことで、それを自分がやらなくて誰がやってあげられるのかと
そして、偽りの快感のお話のとおり、今思えば、君はそれを欲していたんだと
いや、それなしではいられない
そんな風にされていたんだと
そして、君はそれを母に求めたし、母以外の、親しくなる人すべてに求めたんだと
そんなことを思ったんだね
誰に対しても、汚物を吐き出して欲しいと
そんな要求を自らしていたんだと
そんな風に思ったんだね
それだけが君が人と繋がる手段だと
知らないうちにそんな風に思い込んでいたんだと
自分のことなのに知らなかったと
そんな風に思ったんだね
だけど、今日こうして知ることができたんだと
そして、不思議なことにそこに感情は何もないと
さあ、どうなっていくのだろう
それは全く分からないけれど、いつもそばには無意識さんがいるんだと
それだけが、昔の君とは違うんだと
そんな風に思ったんだね