心の傷と無意識さん
そうだね、まさか、まだそういったことを気に病んでいたとは、思いもよらなかったんだね
もう、そういう感情とはしっかり向き合って、そして、君の中では片付いているものと思い込んでいたんだね
それは、君の子供たちがまだ幼いころのお話なんだね
そろころの君は、たった一人で君の子供たちと向き合っていたんだね
そして、そこには残念ながら父親としての夫という存在はなかったんだね
だから、君は孤独で、だけど目の前にいる子供たちからは目を逸らすことができず、苦しみの最中にいたというわけなんだね
そして、子供たちはすっかり大きくなって、君の手を離れたというのに、こんなに時間が経った今であるのに、なぜだかあの頃の感覚が蘇ってきたんだね
あの頃、君は子供と一緒に泣いていたんだね
それは、なぜもっと深く子供たちを愛せないんだと
なぜ、もっと大きな愛で子供たちを包めないんだと
そういった感覚
怒りというより、悲しみだったんだね
君にとっては、君の母親との間の愛、そして君の子供たちとの間の愛という二つの大きな愛があるわけなんだね
母親との間の愛については、常に君の心に引っ掛かるものがあって
だからこそ、そのことについて考えを巡らすことも多かったんだね
そして、そのことにおおよその区切りがついた今、ようやく子供たちとの間の愛についての気づきの時がやってきたというわけなんだね
君は、不思議なことに、母親との間の愛よりも、子供との間の愛の方が何だか気はずかしいんだと
自分がそういったものに執着していることが、恥ずかしいんだと
そんな風に思ったんだね
だけど、どうやら、子供との間の愛というものも、君にとって大きなものだと
そう認めざるを得ないんだと
そんな風に思ったんだね
なぜなら、その愛は一見子供に向けられているようで、それは子供の姿をした自分に向けられているものでもあるからなんだね
そうだね、泣いている子供たちを見た時、君はいつもその中に自分の姿を見ていたんだね
そんなはずはないのに、自分と子供たちは違うのに
君はかわいそうな子供たちと自分を離して見ることができなかったんだね
だからこそ、君から子供たちへの愛は大切で、そしてそれは自分自身に向けられるという意味で、気恥しいものに感じられるのかもしれないと
そんな風に思ったんだね
ただ、君は僕との会話の中で、愛などというものは存在しないんだと
そういったお話を散々してきたわけなんだね
だから、今さら、愛というものについてこんなにも執着しているということ、そして、愛というものが存在すると思っていることについて、どうしたらいいのか分からなし、僕の話が分かっていないということの証拠の様な気がして、悲しくなるんだと
だけど、ここでそのことについて取り繕ってもしかたがないとも思うんだね
そこで、君は今一度、愛というものについて考えたんだね
愛と呼んでいるそれは、ただ愛と呼んでいるだけなんだと
名前をつけただけのもので、それは他の人と一緒のものとは限らないかもしれないと
だけども人間が、それを愛と呼ぶとき、それらに大差はないかもしれないと
そうも思うんだね
それは愛と呼んではいるものの、どちらかと言えば感じるものなのだと
言葉で表すために愛と呼んでいるだけなんだと
そして、それはやっぱり大切なものかもしれないと
だから、色々なお話がそこに帰ってきてしまうのも仕方のない事なのかもしれない
そんな風に思うんだね
道半ばの今は、そう思うのが精いっぱいなんだね