「家族解体」と無意識さん
君が今、台所でお茶碗を洗っている時、僕は君ささやいたんだね
「家族解体」と
そこで、君は、昔の自分に思いを馳せたんだね
幼いころ、君は、家族というものに疑問を持った
なぜ、この人たちと一緒にいなければいけないのだろうと
世間では、家族というものは素晴らしいものだと、ことあるごとに言われているのに、自分はそんなふうには思えないと
君はまだ小さな子供だったはずなのに、なぜだか世間が言っていることよりも、自分の気持ちの方がしっくりくると、そんな風に思ったわけなんだね
そしてね、将来自分が家族を作るとしたなら、決してこんな風にはなりたくない、なんて思っていたわけなんだね
だけどね、今思えばね、そのころはまだ、人に神のような愛があると信じていた
だから、神のようになって、そして、神の様な愛で、自分が作った家族を愛するのだと
そうすれば、幼いころ自分が思い描いていた理想の家族になれるはずだと思っていたんだね
だけどね、さあ、家族を作ったから、神のような愛で、愛そう!と、君はそう思ってはみたものの、どうしても上手くいかないわけなんだね
それはね、今だから、それはそうだろうなと、思うわけなんだけどね
神のような愛が人にはない
だから、君が思っていたような家族の形は、どんなに頑張っても、どこを探しても、やっぱり、ありはしないんだね
上手くいかないことを、どうにかしようと、君は様々な方法を試して、だけど、やっぱりうまくいかなくて、とうとう君は、自分は、そもそも何か勘違いをしているんじゃないかと思ったわけなんだね
そこから君は様々な答えを求めて彷徨ったんだね
それにはとても長い時間が必要だった
だけど、そういった疑問を持ったのは君が初めてじゃないということがわかった
そして、すべては「無」であると
そんな言葉にたどり着いたわけなんだね
だけど、その言葉に出会ったからといって、ああそうだったのかと、出会った瞬間に腑に落ちるということはなかったわけなんだね
そこから、また、その言葉を携えながら、君の旅は続き、今、こうして大嶋先生の無意識さんと出会っているというわけなんだね
そして、今、「家族解体」という言葉を受け取って、君は、あぁ、と思ったんだね
それは面白そうだとね
そんな未来が待っているのかもしれないんだねと
それは、ただ、なんだか楽し気な予感がする言葉だと
意識が形作る世界が変わっていくとしたなら
それも、無意識の進む方向へ
僕の投げかけた言葉を、君は希望という感覚で受け取ったんだね