幸せな人生と無意識さん
あれはね、今思えばとても不思議なことなんだよね
だってね、これまでだってずっと荷物を受け取っていたのに、なんで拒否しなかったんだろうって今なら思うんだよね
だけど、なぜか苦痛の最中にいる時って、そこから逃れられるのに逃れるということに気づかないし、逃れるということ自体思いつきもしないんだよね
だから、のがれようと思った時は既にもうのがれることが出来ているのかもしれない
そんな風に思ったんだね
そして、君はついに母が送りつけて来た荷物を送り返したというわけなんだね
その時はあまり何も感じなかったのに、少し時間が経って君はそのことを母がどう思うだろうかという考えが湧いてきたんだね
もうずっと顔も見ていない、話もしていない母のことを
そして、母に対抗する場面をぐるぐる考えて苦しくなったんだね
君は僕に「考えるのが止まらないよ」と問いかけたんだね
母が何を考えているのか分からないのにそれを考えるのが止まらないんだと僕に言ったんだね
そして、君がその妄想の中で相手にしているのは本人ではないと言ったんだね
それは母の幻なんだと
そんなことを言ったんだね
だから僕は君に「幻なら僕に任せてみたら?」と言ったんだ
すると君は、ああそうかと思ったんだね
幻は相手にできないと
そうかもしれないと
君は思ったんだね
そんなことがあってしばらくして、また君は不快な考えに襲われたんだね
そして再び僕に助けを求めたんだね
君は僕と一緒にその場面を想像してみたんだね
すると、君は母に対して何も話すことなどないと
そんなことに気づいたんだね
そして何だか体の力が抜けた様な気がしたんだね
だから君は、ああ、無意識さんに任せるしかないんだなと納得したんだね
そして不快なループから抜けることができたんだね
それからまた少し時間が経ったある日、君は最も恐れていることについて僕とイメージを共有したんだね
それは君の両親と対峙するということなんだけれどね
君はそれが怖くていつも怯えていたんだね
そして今、君は僕に見守られながらその場面を思い描いてみたんだね
するとなぜか大丈夫かもしれないと
そんな風に思えたんだね
それは今までの君からは考えられないことだったんだね
それはもう考えることすら嫌なことで、どうしたって最悪の状況にしかならないことで、だからこそ君にとっては怖ろしくて仕方がなかったんだね
だけど今はなぜか大丈夫かもしれないと思えているんだね
そして、そこから君がさらに得た感覚があるんだね
それは、つまり、最後はきっとうまくいくというイメージなんだね
そう、それは死を迎える時の君の感覚を感じている様なそんな気がするんだね
最後の最後に、ああ、よかったと思えるような
そんな気がしているんだね
人が死ぬときに自分の人生が幸せなものだったと思うというのは誰もが持つ願いだと思うんだね
そして、まさにその最後の時をきっと幸せな気持ちで迎えられるようなそんな気がしているんだね
そしてきっと大丈夫というのは、全てのことに対してそうであるという感覚なんだね
それは具体的には何一つ説明が出来ないことなのに、なぜだかそう思えるんだね
君を取り巻く状況というものは、少し前から劇的に変わったということはない
それなのに、大丈夫と思えるというのは君にとってもなぜだか全く分からないことなんだね
この感覚を得る前は同じ状況に対して絶望的な感覚しか抱けなかったんだね
それなのに、それがこうして一変してしまったことは本当に不思議でしかたがないんだね
正直なところ、日々君の目の前に飛び込んでくる様々な出来事について、やっぱり君は普通に驚いたり慌てたりしているわけなんだね
だけど、それでも最後の最後を幸せな気持ちで迎えられるというイメージはそういった日々の些細な出来事の延長線上にあるというだけで、なぜだか君をとても強く支えてくれるというわけなんだね
だから君は以前にも増してあらゆることを無意識さんに任せるしかないんだなぁと思って日々を過ごしているんだね
そんな生き方は本当に不思議でしかたがないけれど、本当に何も自分が決める必要などなくて、だからなんだか肩の荷が降りたようなそんな感覚もしているんだね
そうやって生活のすべてを無意識さんに任せることができたなら、きっと今よりずっと素敵な時間を過ごせるのかもしれない
そんな風に思うんだね